【ナレーター】
途上国の教育支援に取り組む学生国際協力団体「STEPS」。全国50大学、600名の学生メンバーを擁する日本最大級の学生国際協力団体の一つだ。カンボジア、フィリピン、ネパールで学校建設や教育プログラムを展開し、これまでに15校の学校建設、3000人以上の子どもたちに教育機会を提供してきた。

この団体を率いるのは、早稲田大学4年生の田中美咲さん(22歳)。大学1年の夏、カンボジアでのボランティア経験をきっかけに、仲間5人とSTEPSを設立。わずか3年間で、団体を全国規模の組織に成長させた。

「教育は、人生を変える力がある」と語る田中さん。彼女が学生団体運営を通じて学んだリーダーシップとは。そして、これから目指す未来とは。
【ナレーター】
田中さんが途上国の教育問題に関心を持ったのは、大学1年生の夏。友人に誘われ、初めてカンボジアでのボランティアに参加した。そこで目にした光景が、彼女の人生を大きく変えることになる。
【田中】
カンボジアの農村部を訪れたとき、学校に通えない子どもたちがたくさんいました。親が教育の重要性を理解していない、学校が遠すぎる、家計を支えるために働かなければならない。様々な理由で、教育機会を奪われている子どもたちの現実を目の当たりにしたんです。

特に印象に残っているのは、10歳の女の子との出会いです。彼女は「学校に行きたい。勉強がしたい」と涙を流しながら訴えていました。でも、家にお金がなく、弟妹の面倒を見なければならない。その子の目を見たとき、「何かしなければ」と強く思いました。

日本に帰国してから、その子の顔が頭から離れませんでした。「自分に何ができるだろう」と考え続けた結果、「学生だからこそできることがあるはず」と思い、団体を立ち上げることを決意しました。
カンボジアでの活動

カンボジアでの教育支援活動の様子

【ナレーター】
2022年10月、田中さんは同じ想いを持つ仲間5人とSTEPSを設立。しかし、学生団体の運営は想像以上に困難の連続だった。資金不足、メンバーの確保、現地とのコミュニケーション。次々と立ちはだかる壁に、何度も挫折しそうになったという。
【田中】
最初は本当に大変でした。活動資金もない、ノウハウもない、人脈もない。ゼロからのスタートでした。まず、クラウドファンディングで初期資金の30万円を集めることから始めました。SNSで発信し続け、友人や家族、知り合いの知り合いまで、あらゆる人に協力をお願いしました。

メンバー集めも苦労しました。最初は5人だけ。「こんな小さな団体で、本当に何かできるのか」という不安もありました。でも、私たちの想いに共感してくれる人が少しずつ増えていって、半年後には30人、1年後には100人の仲間が集まってくれました。

一番難しかったのは、現地のNGOとの連携です。「学生に何ができるの?」という疑いの目で見られることもありました。でも、諦めずに現地に通い続け、信頼関係を築いていきました。今では現地のパートナーNGOと協力して、持続可能な教育支援を実現できています。
【ナレーター】
STEPSは、設立から3年で全国50大学600名規模の組織に成長。年間活動予算は3000万円を超え、これまでに15校の学校建設、100以上の教育プログラムを実施してきた。この急成長を支えたのは、田中さんの戦略的な組織運営だった。
【田中】
団体を大きくする過程で、一番意識したのは「仕組み化」です。最初は私がすべてを把握して動いていましたが、それでは組織は成長しません。メンバー一人ひとりが自律的に動ける仕組みを作ることが重要だと気づきました。

具体的には、各大学に支部を設置し、支部長に権限を委譲しました。また、広報チーム、ファンドレイジングチーム、プロジェクト管理チームなど、機能別の組織体制を整えました。定期的なミーティングとSlackでのコミュニケーションで、全国のメンバーが一体感を持って活動できる環境を作りました。

資金調達では、企業協賛を積極的に獲得しました。私たちの活動理念や成果を丁寧にプレゼンし、CSR活動として支援していただける企業を増やしていきました。今では10社以上の企業から継続的な支援をいただいています。
ミーティングの様子

全国のメンバーとのオンラインミーティング

【ナレーター】
600名の学生を束ねる代表として、田中さんは数多くの困難に直面してきた。意見の対立、メンバーのモチベーション管理、プロジェクトの失敗。それらを乗り越える中で、彼女はリーダーとして大きく成長した。
【田中】
リーダーとして一番大切だと学んだのは、「完璧である必要はない」ということです。最初は、すべてを自分でコントロールしようとして、パンクしそうになりました。でも、仲間を信じて任せることで、自分が想像していた以上の成果が生まれることを知りました。

また、「聴く力」の重要性も実感しました。メンバーそれぞれに異なる価値観や目標があります。一方的に指示を出すのではなく、一人ひとりの想いを聴き、それを団体のビジョンと結びつけることが、リーダーの役割だと思います。

失敗も たくさんしました。プロジェクトが頓挫したこと、メンバー間で衝突が起きたこと、資金が足りなくなったこと。でも、その度にチーム全体で振り返り、改善策を考えてきました。失敗を恐れず、挑戦し続ける文化を作ることが、組織を強くすると信じています。
【ナレーター】
来年春、田中さんは大学を卒業する。卒業後の進路について、彼女は「国際協力の道を本格的に歩む」と決めている。STEPSの活動を通じて見つけた自分の使命。そして、次の世代に託したい想いとは。
【田中】
卒業後は、国際協力NGOに就職することを決めました。STEPSでの経験を活かし、より専門的に途上国の教育支援に関わりたいと思っています。将来的には、自分で国際協力団体を立ち上げることも視野に入れています。

STEPSは、私が卒業しても続いていきます。次期代表に引き継ぎ、さらに大きな組織に成長していってほしいと願っています。私たちが作ってきた仕組みやノウハウを、次の世代がさらに発展させてくれると信じています。

学生の皆さんに伝えたいのは、「行動すれば、世界は変えられる」ということです。私も最初は何もできない普通の大学生でした。でも、一歩踏み出したことで、今こうして600人の仲間と一緒に活動し、3000人以上の子どもたちに教育機会を届けることができています。

年齢も経験も関係ありません。「何かしたい」という想いがあれば、必ず道は開けます。失敗を恐れず、まずは小さな一歩を踏み出してください。そして、同じ想いを持つ仲間と繋がってください。一人では できないことも、仲間と一緒なら実現できます。

団体情報

団体名
学生国際協力団体 STEPS
代表
田中 美咲(早稲田大学4年)
設立
2022年10月
メンバー数
約600名(全国50大学)
年間予算
約3000万円
活動内容
途上国での教育支援(学校建設・教育プログラム)
活動国
カンボジア、フィリピン、ネパール
実績
学校建設15校、支援した子ども3000人以上
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