【ナレーター】
1925年創業、100年の歴史を持つ「松本工業株式会社」。自動車・航空宇宙産業向けの精密機械部品製造で、高い技術力を誇る老舗企業だ。従業員数180名、年商45億円を誇る同社を率いるのは、38歳の若き女性社長、松本美咲氏。
4代目として2018年に社長に就任した松本氏は、創業以来受け継がれてきた職人技術を守りながら、大胆なデジタル化と海外展開を推進。わずか7年で売上を30%増加させ、老舗企業の変革モデルとして注目を集めている。
「伝統は革新の連続である」と語る松本氏。100年企業を継承する重圧と向き合いながら、次の100年に向けた挑戦を続ける若き経営者の軌跡に迫る。
4代目として2018年に社長に就任した松本氏は、創業以来受け継がれてきた職人技術を守りながら、大胆なデジタル化と海外展開を推進。わずか7年で売上を30%増加させ、老舗企業の変革モデルとして注目を集めている。
「伝統は革新の連続である」と語る松本氏。100年企業を継承する重圧と向き合いながら、次の100年に向けた挑戦を続ける若き経営者の軌跡に迫る。
【ナレーター】
松本氏が社長就任を決意したのは、30歳のとき。それまで大手商社で海外営業を担当していた松本氏は、父である3代目社長からの突然の相談を受ける。当初は迷いもあったという松本氏だが、最終的に家業を継ぐ決断をした背景には、ある強い想いがあった。
【松本】
父から「会社を継いでほしい」と言われたとき、正直、戸惑いました。私には兄がいて、当然兄が継ぐものだと思っていましたから。でも兄は別の道を選んでいて、父は私に託すことを決めたと。
最初は自信がありませんでした。製造業の経験もなければ、女性社長という前例もない。でも、工場を訪れたとき、職人たちの技術と誇りを目の当たりにして、「この技術を絶やしてはいけない」と強く感じたんです。
祖父や曾祖父が築いてきた100年の歴史。そして何より、長年働いてくれている職人や従業員の皆さん。その人たちのためにも、この会社を次の世代に繋げなければならない。それが私の使命だと思いました。
最初は自信がありませんでした。製造業の経験もなければ、女性社長という前例もない。でも、工場を訪れたとき、職人たちの技術と誇りを目の当たりにして、「この技術を絶やしてはいけない」と強く感じたんです。
祖父や曾祖父が築いてきた100年の歴史。そして何より、長年働いてくれている職人や従業員の皆さん。その人たちのためにも、この会社を次の世代に繋げなければならない。それが私の使命だと思いました。
100年受け継がれてきた職人技術を次世代へ
【ナレーター】
2018年、松本氏は代表取締役社長に就任。しかし、若く、製造業の経験もない女性社長に対する現場の反応は複雑だった。特に、長年会社を支えてきたベテラン職人たちからの信頼を得ることが、最初の大きな課題となった。
【松本】
就任当初は、本当に大変でした。会議で何か提案しても、「社長には製造現場のことが分からない」「昔からのやり方を変える必要はない」という声が多く聞かれました。それは当然だと思います。私は製造現場のことを何も知らなかったのですから。
そこで、まず自分が現場を理解することから始めました。毎朝5時に出社して、現場で職人の皆さんと一緒に作業をさせてもらいました。機械の使い方を教わり、部品の検査方法を学び、時には失敗もしました。
3ヶ月ほど続けたある日、ベテラン職人の山田さんが「社長、だいぶ様になってきましたね」と声をかけてくれました。その言葉が本当に嬉しくて、涙が出そうになりました。それから少しずつ、現場との距離が縮まっていったんです。
そこで、まず自分が現場を理解することから始めました。毎朝5時に出社して、現場で職人の皆さんと一緒に作業をさせてもらいました。機械の使い方を教わり、部品の検査方法を学び、時には失敗もしました。
3ヶ月ほど続けたある日、ベテラン職人の山田さんが「社長、だいぶ様になってきましたね」と声をかけてくれました。その言葉が本当に嬉しくて、涙が出そうになりました。それから少しずつ、現場との距離が縮まっていったんです。
【ナレーター】
現場との信頼関係を築いた松本氏が次に取り組んだのが、製造プロセスのデジタル化だった。100年の伝統を持つ企業にとって、これは大きな挑戦だったが、松本氏には確かな勝算があった。
【松本】
デジタル化は、伝統を壊すためではなく、伝統を守るためのものだと考えていました。私たちの強みは、長年培ってきた職人の技術とノウハウです。でも、それが職人個人の経験知として蓄積されているだけでは、技術継承が難しくなってしまう。
そこで、IoTセンサーとAIを活用して、職人の技を「見える化」するプロジェクトを立ち上げました。例えば、熟練職人が部品を削る際の力加減や角度、振動などをデータ化して分析する。すると、言語化できなかった「コツ」が数値として見えてくるんです。
最初は「機械に何が分かる」という反発もありましたが、実際にデータを見せると、ベテラン職人たちも興味を持ち始めました。「こういう動きをしていたのか」「だから若手はここでつまずくのか」と、新たな気づきがたくさんあったんです。
そこで、IoTセンサーとAIを活用して、職人の技を「見える化」するプロジェクトを立ち上げました。例えば、熟練職人が部品を削る際の力加減や角度、振動などをデータ化して分析する。すると、言語化できなかった「コツ」が数値として見えてくるんです。
最初は「機械に何が分かる」という反発もありましたが、実際にデータを見せると、ベテラン職人たちも興味を持ち始めました。「こういう動きをしていたのか」「だから若手はここでつまずくのか」と、新たな気づきがたくさんあったんです。
伝統技術とデジタル技術の融合による革新
【ナレーター】
デジタル化により生産性が向上した松本工業は、次のステップとして海外展開に乗り出す。商社時代の経験を活かし、松本氏自ら欧州・アジアの企業を訪問。積極的な営業活動により、海外売上比率は現在35%まで拡大した。
【松本】
海外展開は、商社時代の経験が大いに役立ちました。特に、ドイツの自動車部品メーカーとの取引成立は、大きな転機になりました。
ドイツは製造業の本場で、品質基準が非常に厳しい。でも、私たちの技術力なら絶対に認めてもらえると確信していました。何度も現地を訪問し、工場見学を受け入れ、試作品を作り続けました。
そして、ついに大型契約を獲得できたときは、本当に嬉しかったですね。この成功により、他の欧州企業からも引き合いが来るようになり、海外売上が急速に伸びました。現在、売上の35%が海外で、この7年間で全体の売上を30%増加させることができました。
ドイツは製造業の本場で、品質基準が非常に厳しい。でも、私たちの技術力なら絶対に認めてもらえると確信していました。何度も現地を訪問し、工場見学を受け入れ、試作品を作り続けました。
そして、ついに大型契約を獲得できたときは、本当に嬉しかったですね。この成功により、他の欧州企業からも引き合いが来るようになり、海外売上が急速に伸びました。現在、売上の35%が海外で、この7年間で全体の売上を30%増加させることができました。
【ナレーター】
事業の成長と並行して、松本氏は働き方改革にも積極的に取り組んできた。製造業界で課題となっている長時間労働の是正、そして若手人材の確保と育成。老舗企業ならではの課題に、松本氏はどう向き合ったのか。
【松本】
製造業は「3K」(きつい、汚い、危険)というイメージがあり、若い人材が集まりにくいという課題がありました。でも、私たちの仕事は本当に素晴らしいものなんです。それを若い世代に伝えたかった。
まず取り組んだのが、労働環境の改善です。工場の空調設備を最新のものに更新し、作業服もより機能的でデザイン性の高いものに変更しました。また、週休2日制の完全導入と、残業時間の削減にも取り組みました。
人材育成では、「マイスター制度」を導入しました。若手社員が、ベテラン職人にマンツーマンで学べる仕組みです。デジタル化で技術を「見える化」したことで、教える側も教わる側も、より効率的に技術習得ができるようになりました。
その結果、20代の採用が増え、定着率も向上しています。先日、入社3年目の若手が「この会社で一生働きたい」と言ってくれて、本当に嬉しかったですね。
まず取り組んだのが、労働環境の改善です。工場の空調設備を最新のものに更新し、作業服もより機能的でデザイン性の高いものに変更しました。また、週休2日制の完全導入と、残業時間の削減にも取り組みました。
人材育成では、「マイスター制度」を導入しました。若手社員が、ベテラン職人にマンツーマンで学べる仕組みです。デジタル化で技術を「見える化」したことで、教える側も教わる側も、より効率的に技術習得ができるようになりました。
その結果、20代の採用が増え、定着率も向上しています。先日、入社3年目の若手が「この会社で一生働きたい」と言ってくれて、本当に嬉しかったですね。
【ナレーター】
100年企業を次の100年へと導く松本氏。最後に、経営者としての哲学と、これから目指す未来について聞いた。
【松本】
私の経営哲学は、「伝統は革新の連続である」という言葉に集約されます。100年続いてきたということは、時代に合わせて常に変化し続けてきたということです。守るべきものは守り、変えるべきものは変える。その判断こそが、経営者の仕事だと思っています。
松本工業の次の100年に向けて、私が実現したいことは3つあります。
一つ目は、世界に通用する技術力のさらなる向上。私たちの部品が、世界中の製品に使われる。それが目標です。
二つ目は、持続可能な経営体制の確立。環境に配慮した製造プロセスの構築や、従業員が長く働き続けられる環境づくりに取り組んでいきます。
三つ目は、次世代への技術継承。デジタル技術を活用して、100年培ってきた技術を確実に次の世代に引き継いでいきます。
女性経営者としてのメッセージを求められることもありますが、私は性別ではなく、「どれだけ会社と従業員のことを考えられるか」が経営者に求められることだと思っています。女性だからこそできること、というよりも、私だからこそできることを追求していきたいですね。
これから事業承継を考えている方には、「覚悟と情熱を持って」とお伝えしたいです。会社を継ぐということは、大きな責任を背負うことです。でも、それ以上に、先代が築いてきたものを発展させる喜びがあります。私は毎日、この仕事にやりがいを感じています。
松本工業の次の100年に向けて、私が実現したいことは3つあります。
一つ目は、世界に通用する技術力のさらなる向上。私たちの部品が、世界中の製品に使われる。それが目標です。
二つ目は、持続可能な経営体制の確立。環境に配慮した製造プロセスの構築や、従業員が長く働き続けられる環境づくりに取り組んでいきます。
三つ目は、次世代への技術継承。デジタル技術を活用して、100年培ってきた技術を確実に次の世代に引き継いでいきます。
女性経営者としてのメッセージを求められることもありますが、私は性別ではなく、「どれだけ会社と従業員のことを考えられるか」が経営者に求められることだと思っています。女性だからこそできること、というよりも、私だからこそできることを追求していきたいですね。
これから事業承継を考えている方には、「覚悟と情熱を持って」とお伝えしたいです。会社を継ぐということは、大きな責任を背負うことです。でも、それ以上に、先代が築いてきたものを発展させる喜びがあります。私は毎日、この仕事にやりがいを感じています。
企業情報
会社名
松本工業株式会社
代表者
代表取締役社長 松本 美咲(4代目)
創業
1925年(大正14年)
従業員数
180名
年商
45億円
事業内容
精密機械部品製造
主要取引先
自動車・航空宇宙産業
海外売上比率
35%